Little AngelPretty devil
           〜ルイヒル年の差パラレル

      “ハレの日”
 


冬の弱い陽の中、
それでも葉っぱの緑にいや映える色彩は艶やかで。
今年のサザンカは、
なかなか深みのある色のが咲いてるなぁなんて、
庭先の茂みに目がいったそのまま、思いついた感慨を洩らせば。
年寄り臭いと言われるかと思いきや、

 「そだな、ここのは特別な品種なんだろ?」

俺、最初に観たとき椿と間違えたもん…なんて。
彼の側からも情緒のある言いようを返して来たのが珍しく。
やはり同じ茂みへ目が留まっているのかと思っておれば、

 「…あ、ほら。やっぱ降って来た。」

視野の中に ちらほらと舞い始めていた白いものへ
いち早く気がついてのそれで、
表へ眸をやっていた彼だったらしく。
雪だ雪だと年相応にはしゃいでいるのかと思いきや、

 「やっと日陰の雪も消えたってのに、
  また積もったら面倒だよなぁ。」

 「…まったくだ。」

その初めから厳寒続きなこの冬を象徴したいか、
今週もその頭になった連休から豪雪に見舞われた。
しかも、それと重なったのが、
連休を増やそうという目論み、
いわゆる“ハッピーマンデー法”により、
第二月曜になってしまった祭日の一つ、成人の日で。
そもそもは一月十五日、小正月だったということを、
イマドキのお若い人は
“覚えてない”どころか“知らない”んじゃなかろうか。

 「お年玉つき年賀はがきの抽選もこの日にやったんだと。」

 「イマドキの若いのは知らないんじゃないかって言ってる端から、
  選りにも選って 何でお前が、そうまで詳しいかな。」

雪と言っても
頭上に雪雲があっての降りようとは思えない
ひらはらした軽やかな舞いようで。
離れたところで降っているものが風に運ばれて来た、
いわゆる“風花”という代物に違いなく。
窓から射し入る陽の光も、九時台ともなれば随分とまろやか。
そんな陽だまりで、金の髪をますますと柔らかに暖めつつ、
ほらよと手渡されたマグカップの縁から立ちのぼる湯気に
ほっこりと微笑むお顔も優しげな…という
何とも繊細うららかな見栄えと真逆な、
ぴりりと辛い中身をしておいでのトウガラシ坊や。
毎度お馴染み、蛭魔さんチの妖一くんが、
朝も早よから身を置いておいでなのは、
自宅じゃあない葉柱さんチのリビングだったりし。
大学生のお兄さんたちは後期試験が始まるとかで、
始まったばかりの新学期だろうに、
講義は ほとんどお休みなんだとか。
だからといって
アメフトの練習の方も休みにすれば てきめん体が鈍るので、
部員それぞれへポジション別の練習メニューを作成し、
メールで各々へ送りつけることになっており。
秋リーグ終盤から年末までの体力データをまとめ上げ、
ツンさんや銀さんとも相談した上で作成したメニューを、
最終チェックにと
主将で総長でもある葉柱のところへ持参して来た
小っちゃな鬼軍曹殿。
丁度1週間前の先週末は、成人の日までの3連休だったが、

 「今週は休みじゃねぇだろよ。」

だってのに、ガッコにも行かず此処にいる彼であり。
何でまたと改めて葉柱が問えば、
緋色の口元をそりゃあ朗らかににっかとほころばせ、

 「残念、学級閉鎖だ。」

あっけらかんと言い抜ける。
今年はインフルエンザのみならず、ノロウィルスも猛威を奮っており。
それで…というワケでもないけれど、
伝播性の強いウィルスの拡散を防ぐべく、

  発熱や下痢などの症状が出たらば
  無理はさせずに休ませて、と

学校からも再三の通知が出回っていたものだから。

 「それでなくとも、今時は1クラスの分母が少ないからな。」

%で割り出すなら、6人ほど休んだら閉鎖ってとこか?と問えば、
おうよとうなずく子悪魔様。

 「俺らン時は10人以上だったかな。」
 「1クラス結構いたんだ。」
 「まあな。」

今朝方担任の姉崎せんせえのところへ、
とある児童の保護者から“休ませます”との知らせが入り、
それをもって閉鎖への規定人員に達したので、
他の児童ら(の父兄)へ一斉メールが送られたのだとか。

 「だからってウチへ来るか、お前。」
 「いーじゃん。外を出歩くよりかは安全だし。」

部員らへのメニューも含めて
連絡することが 二、三あったその上、

 “ガッコも試験中だとかでグラウンドは出入り禁止じゃんか。”

日程上、試験のない日だった葉柱だというのはチェックしてあったのでと、
こうして朝っぱらから急襲している坊やだったのであり。
それはともかく、

 「今年の成人式って、
  暴れる奴ァ出なかったのかなぁ。」

毎年毎年 懲りもせず、酔っ払ってか数に任せてか、
式典会場に乱入して暴れまくる
“迷惑成人”の話題が毎年恒例のはずが。
今年は爆弾低気圧のもたらした大雪に襲われたため、
着飾ったお嬢さんたちも大変だった…という話しか
聞かれなかったような気が。
雪の話からそういう辺り、
思い起こしたらしい坊やだったのへ。
三十人は居よう部員全員へのメニューをチェックしつつ、

 「居たこた居たんだろうが、
  話題にするほどでもなかったんじゃね?」

葉柱の応じもあっさりしたもの。
何しろ雪で大変だった、今年の“成人の日”で。
車がスリップで立ち往生したとかで、
選りにも選って
高速の真ん中に乗り捨ててった奴もいたらしいからな、と。
そういうニュースの方が引きも切らずだったようでは、
成程 しょむない迷惑行為、
取り上げてる場合でもなかろうというお兄さんの見解へ、
だろうなぁと納得はしたらしいものの、

 「ルイはちゃんと式典とやらに出たのか?」

確か昨年、成人式は済ませているはずと、
そんな曖昧な問いかけになってる坊や。
だってだって、

 “うかーっとしてて覚えてなかったもんなぁ。”

やはりやはり後期試験前だというパタパタの最中だったのと、
葉柱も特に支度の気配とかして見せなんだので、
迂闊にも該当年度だと気づかなかったのだ。
坊やが“不覚だった”とほぞを咬んだのは言うまでもなかったが、

 「言ったろが。そんなの下らんから出てねぇって。」

仲間内でツーリングに出掛けただけだと、
こちらさんはコーヒーを満たしたカップを口元へ運んだ葉柱が、

 「…お。」

ふと何かしら気づいたらしいメニュー内の問題箇所へ、
これはどういうことなんだ?と、
小さいが頼もしい参謀殿へ質問を投げかける。
平静のお顔なのは
今でも さして大事だとは思ってなかったからなのだろうが、

 “そっかなぁ…。”

 誕生日なら毎年来るけど、
 卒業式とか成人の日とかは
 一生に一回しか来ねぇのにな。

そういう特別なアニバーサリを
祝わないのは勿体ないよなぁなんて。
ふと思ってしまった子悪魔坊や。

 “………あれ?”

でもね、あのね。
他の人へはそんなこと思わなかったのにね。
周囲には、彼だけじゃなく、
進さんとか桜庭さんとか、
やっぱり“成人の日”を迎えたのだろお人は
わんさといたのにね。
なのに、どうして葉柱のお兄さんへだけ
そうと思っちゃたのかと言えば…


 “………もしかして、
  俺ってルイの親みたいな感慨になってんのかなぁ。”




  ………………………………もしもし?



いい線いってる想起じゃありますが、
大人の皆さんに聞かせたら、笑うかコケるかのどっちかだろうと、
もうちょっと大人になったら気がつくかもです、子悪魔様。




     〜Fine〜  13.01.18.


  *ホントは“成人の日”と大雪の話とか
   書くつもりだったのですが、
   ちょっと個人的にバタバタしちゃって
   日を逃しちゃったといいますか……。
   いやぁ、色んなことが起こるもんです、はい。

  *それにしても、今年の成人の日は
   とんでもないものとの抱き合わせになりましたね。
   JAFの人は大忙しだったとか。
   でもまあ、毎年恒例のように
   酔っ払った新成人が乱入する式典を
   朝っぱらからワイドショーで観せられるよりは
   マシだったかもですが。

  **毎年思うんですが、
    何であれ、意味不明なモザイク入りなんでしょうね。
    威力業務妨害って犯罪を犯した、
    しかも成人なんだから映してやりゃいいのに。
    どうせ全国の人にはどこの誰だか判らないんだし、
    逆にいや、モザイクされたってご近所には広まる話でしょうに

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